アメリカ日本人列伝

「考える前に動け、動いてから正せ」Ramen Ryoma店長 加藤颯一郎さん

加藤そういちろう

愛知工業大学名電高等学校、NIC International College in Japanを経てアメリカ留学を選んだ加藤颯一郎さん。

学生時代はバスケ一筋だった高校生が、なぜアメリカ・ラスベガスを進学先に選んだのでしょうか。

短大を卒業後は現地の日本食レストランからビザを出してもらい就職。

現在はポートランドにある"Ramen Ryoma"の店長として活躍する颯一郎さんに、アメリカでの生活を語っていただきました。

アメリカ留学を決意

日本ではどんな学生だったか教えてくれませんか。

勉強はろくにせずバスケットボールだけをやっていました。強豪校に入ってしまい練習の毎日で学校は授業中寝るために行っていた様な物です。

寝ている事がコーチにバレたら即終わりでしたので、バレない様に上手に体力を温存しながら全てを練習に捧げていました。

その結果勉強が全然できなく赤点を取る度にボウズにさせられ女の子ともまともに遊べず、思い描いていた華やかな高校生活は送れませんでした。

女の子にモテる事がなかったその悔しさは今、仕事を頑張れる大きな理由の一つになってます。

周りの友達が日本の大学進学を選ぶなか、なぜアメリカ留学を選んだのでしょうか。

自分でもアメリカ留学を選んだはっきりした理由が未だにわかっていません。決断したのは高校2年生の冬でした。

三者懇談(こんだん)で進路を決めろと必要以上に迫られている気がして、逃げ道を作るかのように出た言葉が「俺はアメリカに行く」でした。

横にいた母親が自分の顔を二度見したのを今でも覚えています。

自分の直感でアメリカ進学を決めたんですか。       

そうですね、直感というより好奇心ですね。

今までもそうですが、理由や意味がはっきりしてから行動するのではなく、行動してから理由や意味を考える意識を持ってます

要するに考える前に動け、その後考えろと言い聞かせているので今までも行動に移すのが早いです。

さらにスピードを上げているのは、誰にも相談しないで行動するのがポリシーです。自分は生まれてから自分の進路を親、先生、友達、誰にも相談した事はないです。

ましてや親なんて出来るだけ子供に苦労して欲しくないという生き物なので親の意見は絶対に参考にしてはいけないと心に決めてます。自分で決めるからこそ後悔は無くなります。

未来の事なんて考えたって無駄って事です。様々な選択肢の中から自分たちは答えのわからない道を選んでいくしかない中で、いちいち調べたり考えたり迷ったり相談している時間は無い。

とっとと選んで行動に移して逃げ道をなくした後に、選択した道を正しかったと思える様に進んでいく方法を自分の責任で考えろという意識を持ってます。

逆に日本の大学に行きたくなかった理由はあったのでしょうか。

勉強が嫌いだったのもありますが、そもそも学歴で自分を飾る様な行為は死んでもする気はありませんでした。

渡米を決意した事で勉強もする必要がなくなり社会経験をつめるアルバイトを中心とする生活に切替てそこそこの成績を保てるぐらいに学校もサボりながら通ってました。

漠然と将来は成功してお金持ちになってやるという野心はこの頃から芽生えてきたように感じます。

意識レベルの低い一般学生と同じ様な進路を辿(たど)れば、どこにでもいる人間になってしまうと本能的に危機感を感じた結果、渡米という誰も選択肢として持っていない道を選んだのかもしれません。

アメリカ内でも様々な渡航先がある中なぜラスベガスだったのでしょう。

響きがカッコ良かった、ただそれだけです。

渡航先を決める際に現地からいろいろな学校の先生が来て学校の説明をしてくれました。

当時は英語が聞けなかった為ほとんど何を説明しているのかわかりませんでしたがどの学校の先生も似たり寄ったりでこの学部が盛んだよ、キャンパス内はこれだけ充実してるよ、こんな実績もあるよなどありきたりな説明してるなという事だけはわかりました。

その中でも唯一ラスベガスの先生だけは学校の説明は一切せず、ラスベガスにはこんなに遊ぶところがあるという学校紹介でした。これはファンキーだなと思い即決でしたね。

同期の留学生が200人近くいたのですがラスベガスに行ったのはたったの7名でした。

何でこんなに少ないのか不思議に思ってましたがネバダ州は大学がカルフォルニア州に比べると非常に少なく選択肢が狭まれるという事を後に知りました。

ラスベガスはサービス業が盛んな町だという事を現地に着いてから知り、さらに合法で働けるという事もあり非常にいい選択をしたなと今でも思います。

渡航先としてラスベガスはおすすめできますか。

アメリカで社会経験を積めるメリットと、アメリカ留学する上で学校に通うだけでは社会人になる前の準備が全く足りないので、ラスベガスは非常におすすめできます。

現地で働けるという事はとても貴重な体験です。金銭的にも余裕ができ、多くの留学生が欠けてしまう社会経験を留学しながら学べます。

そういちろう 卒業そもそも学校の授業なんて社会出て何の役にも立たないのに学校に通っているだけで満足している様では甘すぎます。

留学生活で最も重要になってくる事は、学校外で何をするかです。これもあくまで個人的な見解ですが英語で専門科目を学ぶ事自体がナンセンスと思っています。

何か学びたい事があるなら日本語で学んだほうが遥かに早い。

こちらにいる勘違い学生は、不自由な英語で学ぶ事で内容はさほど理解していないにもかかわらず”勉強した気になっている”パターンが多いです。

働くことによって本場の英語も身につき金銭面でも自立して生活できるのでよっぽど自信がつく。

生で働けないからという理由で20代前半の数年を親のクレジットカードで優雅に過ごしている同期の学生をたくさん見てきました。

言葉選ばずに言わせて貰えばそんな奴ら絶対成功しない、甘えるのもいい加減にしろと言いたい。

留学するならラスベガスですね。

アメリカに来てぶち当たる言葉の壁

アメリカに来て1番大変だった事はなんですか。

ありきたりな答えになりますが、英語です。「3ヶ月もすれば聞こえる様になって半年もすればペラペラになるよ」というデマを流した人は逮捕してほしいです。

自分が短大を卒業した時点ですら全く使い物にならない英語力だったのを覚えています。

非常に悩んでいたのですが、今勤めている会社の社長が当時学生の自分に言ってくれた言葉で完全にその悩みも無くなりました。

英語が喋れない事で非常に奥手になってしまっていた自分に対し、

「なぜ英語がうまくないからと言ってへりくだるのか。日本人の君がHey what’s up bro(アメリカの若者がする挨拶)見たくヤングで粋で流暢な英語を喋る必要がどこにあるのか。自分らは日本人としてここにいて、日本人にしかない良いところを持っているではないか」

と話してもらってからは、かなり心が軽くなって変な話そこから英語の勉強をしなくなりました。笑

アンテロープ そういちろう確かに多くの日本人留学生が自分の英語に自信がなく、アメリカ人との会話に消極的になっていますよね。

そうですね。間違った英語を話す事が恥ずかしいという感情が消極的にさせてしまうのはわかります。そこをいかに開き直るかが重要ですね。

今では周りに「自分の下手くそな英語を理解出来る様になる勉強をしろ」と言わんばかりの姿勢で、かなり強気で生活できています。

英語をうまく話す必要は無い。大事なのは自信を持って話す事だと捉える事ができたことで非常に気持ちが楽になりました。

颯一郎さんは、日本人がアメリカ人のように英語を流暢に話す必要はないと思いますか。

そりゃあってこした事はないですが、十代後半から全く英語が0の状態からいくら勉強したってたかが知れているという事です。

こっちに何十年も住んでいる日本人の英語を聞けば一瞬でわかりますね。あ、これ長く住んだからって英語力の伸びは関係ないって。

しっかり何年も深く英語の勉強をすればどうかわかりませんがそこに時間かけるぐらいなら他にするべき事あるのでは、と思います。

すでに日本人として英語が上手くなくても聞けて話せてコミュニケーション取れるだけですごい事だと思うんで、それをどう生かすかを考えたほうがいいですね。

とは言っても生活をする上で最低減の英語力は必要だと思います。そのレベルは自分なりに決めて、それさえクリアできればあとはパッションさえあれば伝わります。

英語は所詮ツールに過ぎませんし、英語力でその人の価値は図れません。

大事なのは英語力をある程度のレベルまで持っていき、今後どうやって人の役に立たせることができるかです。

卒業後はアメリカで就職

短大を卒業したあと現地の会社からビザを出してもらい、レストランに就職したと聞きましたが、なぜレストランだったのでしょうか。

レストランはたまたまでした。昔から明確な夢、目標は無く、自分を必要と思ってくれた人がたまたま飲食業だったという事です。

自分なんかにこの職業がいい、この会社に入りたいなど選ぶ権利はないと思っていました。

自分に自信が無いというわけではなく、スキルも学歴もなければ特化している事も無い人間が選り好みをするのは間違っていると思っていたからです。

やはりそれも、先ほど言っていた行動してから考えるということでしょうか。

ramen ryomaそうですね。こう言う業界に行きたい、こういう会社に入りたいなど多くの学生が口にしますが、自分には未だに理解ができません。

なぜ実際にやった事もない、現場で働いている人とも話した事がないのにやりたいと思うのか。

なぜ実際に働いて給料も貰ってもないのに、その会社に入りたいと思うのか。なぜその仕事をして誰かの役に立ち、誰かに喜んでもらったことも感謝されたこともないのに職業を決めてしまうのか。

名前だけかっこいい職業、有名企業に勤めたいなどの薄っぺらい目標を掲げるだけで、自分は正しい選択をしていると思い込んでしまう様な学生が多かったですね。

自分は逆で、目の前の事を全力で取り組んだ結果、今の職業がたまたまレストランだったというだけです。

実際にレストランで働いてみて、やりがいはありますか。

自分の仕事の定義は、どれだけの多くの人の役に立てるかです。お客さんや従業員の役に立ってその結果、感謝をされる事こそが仕事をすると言う事だと思っています。

それを心の底から思えた時にその仕事にはやりがいというおまけがついてきます。

“やりがい”という誰もが仕事を選ぶ際に安易に使う言葉ですがはっきり言って“やりがい”はその職業、会社、仕事にくっついているものではない。

どの仕事にも必ずやりがいはあります。その“やりがい”をその仕事から見出す力があなたにあるのか無いのかの違いです。

自分は時が経つごとに今の仕事が好きになってますし、やりがいが増しています。

多くの学生がやりたい事、やりがいのある事を探して時間を無駄にしている中、自分はたまたま目の前にあった仕事を好きになる努力を誰よりもした結果、今の仕事を”やりがい”のある仕事にできたという自負はあります。

この仕事の本質を理解していないが故にいつまで経っても腹を括る事ができず、もっと自分に合う仕事があるはずだ、もっと楽しい仕事があるはずだ、など年を重ねるごとに言い訳が出てきて目の前の仕事に本腰を入れる事ができずにうまくいかない20代の人はいっぱい見てきてます。

アメリカで仕事、さらに店長ともなると大変なことも多いのではないでしょうか。

ramen ryoma noodle当時22歳でいきなり店のトップになったのでもちろん経営の経験もなく、ましてや外国人をまとめるなんて人生最大の挑戦でした。

どうしても日本人では考えられない事をしたり言い出したりしてしまう外国人。

それを無理に日本人の文化を押し付けるようなマネをしてしまっては逆効果なんですが、案の定自分はそれをしてしまい一時組織が崩壊しそうになりました。

相手の文化、考え方を理解する努力を日本人の自分からしようという姿勢になってからは(お店が)うまく行くようになり、あまりふざけた事をされても苛立つこともなくなり結果的に組織、チームとして円滑に回るようになりましたね。

大事なポイントはまずはこちらから、あちら側の考え方や文化に関心をもって理解し、受け入れてあげた上で自分の日本的な考え方をシェアする感覚で接することです。

とは言っても自分がトップとして譲れない部分はどうしてもあります。いや、持ってなければいけないと思います。

自分が決めた譲れない部分を守れない従業員とは喧嘩しようがしまいが、とことん戦ってやろうと言う気持ちです。

舐めたら痛い目に合わすぞという心構えは外国で闘う上では非常に大事と思っています。

留学を目指している学生への言葉

これから留学を目指している学生に向けて、何かアドバイスはありますか。

そういちろう オレゴン正直アメリカ留学はお勧めはしません。

留学生もピンキリなのであくまでも自分の見解ですが、9割は知識のない親が、ただ海外の大学に行かせていると言うだけで自分の息子、娘は立派な事をしていると勘違いして多額の留学費用を垂れ流しているように見えます。

そんな大金があったら家族旅行に数十回行った方がよっぽど価値のあるものになります。

アメリカに住んで学校に行くだけで自分はすごいと勘違いし、現実逃避をしながら現地で努力を怠る留学生が自分の周りの9割を占めていました。

よく聞くと思いますが日本人留学生は日本人だけで固まって英語が全く伸びないと言います。

100%事実でさらには毎日酒を飲みながらダラダラ過ごし、マリファナを吸う事をカッコいいと思い始めて勉強は愚か、学校すらサボり始める者も沢山いました。

学生は弱い生き物なので、親が見ていなければ自然とこうなるのもわかります。 親からして見れば留学費が相当な額なので、子供達は外国で頑張っていると思い込んでしまいたいのでしょう。

アメリカという国には面白い文化があって、あまり他者に関心がありません。

あなた大学何年生だよってぐらい長く卒業できずに学校に残ってる人もいますが、周りはさほど気にかけないです。

日本ならあの人、留年生活何年目など影で噂されます。そう言った面もここアメリカは弱者にとっては心地がいい様に思います。

確かに留学をしにきているのか、長期海外旅行にきているのかわからない学生は多いですよね。

多いです。留学をすればそれだけで英語が身につき将来有望になるわけではないです。

自分自身で考えて行動して道を開き続ける強者のみが、親が支払う多額の留学費用に価値を初めて見出せます。

そんな覚悟がない留学生に比べたら、黙って日本でアルバイトしている人達の方ががよっぽど社会的に立派だと思います。軽い気持ちやええ格好しいで留学は決してしない方が良いです。

アメリカ留学をして今でも現地で仕事をする颯一郎さんはあまり留学することに積極的ではないですね。

それだけ多くの留学失敗例を見てきたからだと思います。

当たり前ですがどこの留学斡旋業者も、現地の先生も、学校で配られるパンフレットに載ってる留学生の声も見事に真実を言いません。

何が成功で何が失敗なんてのはもちろん定義はできませんが、両親が一生懸命働いて稼いだお金で留学という贅沢な事ができていると心の底から感謝し、自覚できていた人間がどれだけ少なかった事か。

両親の期待も背負い、人と違った道を歩むからにはそれなりの結果を出す義務がある。

それぐらい留学という選択肢は重いという事を自覚できれば是非してほしいですね。

インタビューを終えて

多くの留学生が「将来はアメリカで働きたい!」と夢を持ってアメリカに来ます。

しかし現実は厳しく、留学生がビザをもらって就職出来る確率は全体の1%だと言われています。

なぜ颯一郎さんはその1%に入れたのでしょうか。

実は彼と私は、ラスベガスで同じ学校に通った同級生。

当時から彼は自分の決めた道に自信を持ち、どんな逆境でも前向きに一歩一歩進んでいました。

学校に行きながら、仕事先でも全力で働く姿を見た彼の社長が、当時22歳の颯一郎さんをラーメン屋の店長に選んだのは、必然だったのかも知れません。

努力を惜しまず、周りの学生と違った視点で生活していたからこそ、「覚悟なしに留学なんてするな」と言い切れるのでしょう。

【もっと加藤颯一郎さんについて知りたい人はこちらから】

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ムネ

ネバダ州立大学ラスベガス校卒。現地の会社からE2ビザを取得しラーメン屋店長になるも、2年後にコロナで解雇。ロスに引っ越すもそこで不法滞在となる。日本への一時帰国を経て現在はサンディエゴのレストランで働いています。 Facebookページから最新記事をお知らせ
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