アメリカ日本人列伝

「若者よ、世界に翔け!」東洋医師 関根啓太さん

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東京生まれ東京育ち、早稲田大学を経てラスベガスで東洋医学を学んだ関根啓太(せきね けいた)さん。

海外に全く興味のなかった彼がアメリカ留学を目指したのは、フィリピンでの体験が決め手だったと言います。

現在は東洋医師としてアメリカで活躍する啓太さんに、留学に行く前、アメリカの大学院、東洋医学、国際結婚と幅広い分野のお話を聞きました。

 

人生を変えた転機

アメリカ留学前、日本ではどんな学生でしたか?

一言でいうと、かなり遊ばなかった学生ですね。

中学は野球部、高校は卓球部で毎日練習漬けでしたし、家に帰ってからは大学に向けての勉強ばかりしていました。

都内の学校に通っていたのですが、一度も新宿とか渋谷に行ったことがないと思います。笑

実は小学校の時の通信簿はC評価ばかりで全然勉強が出来なかったんです。

そんな時、小学校5~6年生の担任の先生から「テストっていうのは100点取るのが当たり前なんだ」と言われたことが僕のターニングポイントでした。

それから本気で勉強したところ、漢字テストで100点を取れた事があって、やれば出来るんだとわかり、そこから勉強に対する意識が変わりました。

親も褒めてくれる様になり、なんか自分の価値を感じる様になったというか、承認欲が満たされたというか。

1つのことに本気で取り組むことが昔から好きで、スポーツでも勉強でも、なにかに熱中している時が楽しかったのを覚えています。

アメリカを意識したのはいつ頃からですか?

大学を卒業してからですね。

高校の時に生物学の勉強が好きで、大学でも生物や人間の健康に関することを勉強して、将来は医療に携わりたいと思っていました。

大学中にお金を貯めて大学院に行こうと計画していましたが、最終面接で落とされてしまい、そこで勉強する気をなくしてしまったんです。

そんな時、同じ大学に通っていた友達がアメリカの大学院に進学して、彼女から東洋医学の大学院を紹介してもらったのが最初にアメリカ進学を意識したきっかけです。

今までアメリカ進学なんて考えたこともなかったのに、急にアメリカに行こうと思ったんですね。アメリカ留学を後押ししたものなどありましたか?

僕が大学で勉強に対するやる気を失っていた時、同じサークルの仲間が社会貢献に積極的だったんです。

彼と話していくうちに「自分は何のために生きているのか」と考える様になり、そこから社会とか、世界のために生きようという風に考え方が変わりました。

「日本だけでなく、世界で活躍する人材になりたい」という気持ちがアメリカ留学を後押ししたのかもしれません。

あとは日本で鍼灸師の資格を取ったとしても、漢方を処方することができなく、行える治療に制限があります。

その点アメリカで大学院を出ると東洋医師(Doctor of Oriental Medicine)として扱われ、鍼灸や漢方の治療をすることができます。

(※州によってタイトルが異なります。ネバダ州では東洋医師として呼ばれます。)

また、学士課程と修士課程合わせて8年以上も勉強するので、社会的なステータスが高く一般市民から信頼を得られています。

更に、アメリカで取った免許は南米やアフリカでも通用するので、今後世界で活躍するならそっちの方が良いなと思いました。

一番大きな決め手となったのはフィリピンでの体験です。

アメリカ留学へ行く前に、フィリピンに10週間ほど語学留学をしていました。

首都マニラの空港についてからバスで学校に移動している時に、小さい子供が街でお金をせがんでいる光景は衝撃的でした。

日本人として生まれて幸運だと思った反面、自分は恵まれない人のために何かできないのかと考え始めたんです。

フィリピンに行くまではアメリカでずっと東洋医師として働きたいと思っていましたが、その時の体験からアメリカだけではなく、アフリカなどでなにか社会貢献ができれば良いなと思いました。

現在ではアフリカに行った日本人の友達をつたって、オンラインで健康に関する情報をアフリカの人々に伝える機会が持つことができました。

 

アメリカと日本、教育現場の違い

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日本の大学を卒業後、フィリピンでの語学留学を経て、アメリカの大学院に進学されたんですね。アメリカに来て一番苦労したことはなんでしたか?

やっぱり英語ですね。

フィリピンに行った最初の1ヶ月は英語が分からず、2ヶ月目から慣れ始めて「自分英語出来るじゃん」と思っていたのですが、アメリカに来てその自信は打ち砕かれました。

フィリピン人が話す英語って結構遅くて、アメリカ人の英語は凄い早いんですよ。

大学院で最初に3時間の授業を受けたのですが、正直10%くらいしか分かりませんでした。

授業が終わってから、教授のオフィスに教科書とマーカーを持って行って、ずっと質問していましたね。

多分1年くらいは教授のオフィスに通っていたと思います。

そこまで諦めずにオフィスに通ったけいたさんも凄いですが、1年間教えてくれた先生も優しいですね。アメリカと日本の教育現場でなにか違いを感じましたか?

keita san wongu生徒が教授のことを下の名前で「ヘイ、アンジェラ!」みたいに呼んでいたのは驚きました。

アメリカ人は上下関係がなく、教授も生徒を友達の様に接しています。

僕も教授とは仲が良く、電話番号やラインを教えてくれたので気軽に質問出来ました。

これって僕が日本に行っていた時には見なかった光景で、日本には良い意味でも悪い意味でも上下関係は存在します。

〇〇教授とか、〇〇先生というふうに呼ぶので、教授を下の名前で呼ぶなんて考えられません。

あとは日本で僕が授業を受けてきた傾向として、知識を教えたり、カリキュラム通りに教える教授は多かったですが、アメリカだといかに授業を面白く教えるかと言う風に、エンターテイメント性のある教授が多いです。

授業中ジョークも言うし、分かりやすく具体例も出すので授業も面白く、結果的に生徒も知識が身につきます。

その点日本の私が見てきた多くの先生はただ教科書の知識を詰め込むだけという印象が強いですね。

日本の先生も知識は凄いんですが、それを伝えるコミュニケーション能力がアメリカ人の先生より劣る気がします。

 

東洋医学とは

大学院を卒業して東洋医師として活躍しているとお聞きしました。まずこの東洋医学とはどういったものなのでしょうか?

keita clinic at door西洋、インド、また中国など地域によって宇宙や人間に対する捉え方が違って、これが医学にも直接反映されています。

例えば、西洋医学は17世紀頃の哲学者、デカルトやニュートンなどが提唱した心と身体を分けて考え、人間を機械のように捉える考え方に基づいて発展してきました。

ですから西洋医学では身体を部分部分で見る傾向にあります。

なので、治療としては頭痛があれば頭痛薬を投与し、腎臓が働かなくなったら新しい腎臓を移植していくという風に対処療法的になりやすいと言えます。

一方で東洋医学は、世界最古の哲学書と言われている「易経(えききょう)」が基礎となっています。

そして、この易経の根底にあるのが陰陽(いんよう)で、陰陽を簡単に説明するとこの宇宙のあらゆるものは相対的な関係性で成り立っていて、これらはバランスを保っているという考え方です。

例えば、「温かい(陽)」が存在するには「冷たい(陰)」が存在しないといけません。そして、春夏は暑く秋冬は寒いというように陰陽は一年を通じてバランスをとっています。

つまり、東洋の哲学では何かが存在するためには陰と陽という相反する存在が必要で、陰陽は調和を取るという宇宙観があるんですね。

東洋医学においてもこの考え人体に応用されて、例えば内臓の肺と大腸は陰陽の関係性を持っていて、お互いにバランスを取り合いながら働いています。

ですから診断するときには、患者さんが肺に関わる病気があれば、肺だけでなくペアの臓器である大腸も考慮していきます。

そして診断した後に治療する時に使われるのが、皆さんが知っている鍼だったり、お灸または漢方だったりします。

病院に来られる患者さんに、啓太さんはどんな施術をするんですか?

先ずはその人がもっている症状を聞いていって、その後に脈や舌を診ていきます。

これらをすることによって、その人がもつ体質や五臓六腑、つまり内臓の働きがどうであるのかを調べていきます。

この最初に行う診断が東洋医学において一番大事なんです。

なぜならば東洋医学では患者さんが訴えている症状に注目するのではなく、その症状を引き起こしている原因は何なのかを追求していくからです。

そうすると、胃が痛いという人が来たときに、実はこの原因が胃ではなくて他の臓器に問題であったということが分かってくるんですね。

面白いですね、西洋医学だと胃のレントゲンをとって診断するところを、東洋医学では他の臓器や症状との関係性を見ながら診断するんですね。なんか東洋医師にはコミュニケーション能力がすごい問われそうです。

clinic keita そうですね、患者さんの症状だけでなくその人全体を診ることが大事になっていきます。

ただし東洋医学にも弱点はあって、これらの診断って全て主観的ですよね。

なので同じ患者さんを診断したとしても、医師によって診断が全然違うんです。

大学院付属のクリニックで様々な教授の指導のもとインターンシップをしていた時に、同じ患者さんに対して教授ごとに違うの診断が下されるので混乱した記憶があります。

その点西洋医学は目に見える検査値や画像などに基づいて診断されるので、客観的ですよね。

そう言った意味で、診断を決定する上では西洋医学の方が優れているかもしれません。

啓太さんが診断する患者さんの中には、全く東洋医学を知らない人も多いと思います。そういった患者さんにどうやって東洋医学を説明するのでしょうか?

自分が働いているのは東洋の文化が根付いていないアメリカですので、クリニックでは陰陽とか気といった東洋医学の専門用語をあまり使わないようにしています。

初めて来院される患者さんには「鍼をここに刺したら副交感神経が刺激され、身体がリラックスすることができます」などというふうに西洋医学的に説明しています。

その方が患者さんも納得して治療を受け、満足したら友達を連れてきてくれますよ。

もちろん東洋医学の本質を伝えることも大切なのですが、それ以上に相手の文化にどう適応して受け入れてもらえかということが大事だと思います。

 

ハプニングだらけの国際結婚

啓太さんの奥さんはウクライナ出身とお聞きしました。奥さんとの馴れ初めを教えてくれませんか?

カナダ人の友達のおじさんの紹介で知り合いました。

アメリカに来てから、アジア人とは結構仲良くなれたんですが、白人や黒人の人たちと仲良くなれなかったので、それを克服したいなっという気持ちがありました。

ちょっと変わっているかもしれませんが、結婚するなら自分とは人種も全然違う人としたいなと。

そういった相談をそのおじさんにしていて、当時カナダで働いてた奥さんを紹介してくれたんです。

最初はスカイプを通して話したんですが、一気に5時間くらい話しましたね。

まあその5時間中、4時間半は彼女が喋っていましたけど。笑

本当に啓太さんとは真逆の性格でよく喋る女の子をおじさんは紹介してくれたんですね。笑
最初からこの子いいなというのはありましたか?

keita with wifeありましたね、それから3ヶ月くらい毎週スカイプで話して、彼女に会いにカナダのサドバリーというトロントの近くの街に会いに行きました。

でも1回目のデートで大失敗してしまったんですよ。

サドバリーなんて行ったこともないし、聞いたこともない街だったので、なにも準備せず彼女が案内してくれるのかなと思って行ったら、彼女は僕が案内してくれると思ってたんです。

彼女はそこに住んでいるのにですよ。

そしたら彼女がデートの途中で泣き出してしまって。

最初はなんで泣いてるんだろうと意味が分からなかったのですが、これは本当に文化の違いで、彼女が育った東ヨーロッパでは男性がエスコートをして、ご飯も奢るのが当たり前という文化なんですね。

だから彼女も僕にそれを期待していたみたいなんです。

三日くらい滞在したのですがその状況は好転せず、僕はラスベガスに戻りました。

次は1ヶ月後にトロントで会う予定を立てていたので、その時は旅行会社みたく詳細にプランを組んで会いに行きましたね。笑

レンタカーも借りて、キャンプ場やレストランも予約していたので、その時は上手く行きました。

彼女の反応もすごい良く、1回目のデートのリベンジが果たせて良かったです。

その2回目のデートから本格的にお付き合いをして、彼女もラスベガスに来てくれて、ラスベガス観光したり、ロサンゼルスに行ったり。

結婚を前提にお付き合いを始めていたので、その8ヶ月後に結婚しました。

今は結婚してから約2年とお聞きました、結婚生活の中で文化の違いなど感じますか?

感じますよ、一緒に住み始めてから最初は毎日の様に喧嘩をしていましたね。

例えば僕が思っていることを素直に言わないこと。

これはけっこう日本人に多い傾向かもしれません。

彼女は思ったことを素直にハッキリ言うタイプなので、その違いが彼女をイライラさせてしまったと思います。

「なんで嫌いなことがあったら言ってくれないの」とか、ヨーロッパの人はストレートで感情を伝えますね。

「愛してるよ」ってなんで言ってくれないのと怒られたこともあります。

日本人って生活していてそんなセリフ言わないじゃないですか。

僕も自分の両親が僕の前で「愛してるよ」なんて言っているのを聞いたこともないですし。

あとは人前で愛を表現してほしいとも言われますね。

例えば友達と会っている時に手を繋いで欲しいとか、ハグしてほしいとか。

最初恥ずかしくてすごい嫌だったんですが、彼女がして欲しいならと、それはするようになりました。

僕も彼女の文化に適応する様にしていますし、彼女も僕の文化や性格を理解してくれるように努力してくれています。

結婚生活のなかで意識していることなどありますか?

keita san with wifeyこれは東洋哲学に影響を受けているのですが、自分を主張すること以上に、2人でどう幸せになれるかというところを見つけるように努力しています。

やはり自分がいるのは相手のおかげなので、相手の為に生きることを忘れてはいけないと思います。

例えば、僕が愛情表現が嫌だったら、僕はそれをしなくてもいいじゃないですか。

でも僕が愛情表現をすることで彼女が喜んでくれるのなら、自分の嫌な部分は変えていっても良いかなって考えています。

相手が喜んでいる姿を見て僕も幸せになりますし。

西洋の文化って個人の主張を立てて、発言も主体的であることが多いんですよ。

ただ夫婦の中で個人を主張しすぎると、2人の関係は崩れてしまいますよね。

僕もアメリカに来て多くの友達の家族に義理のお父さんや連れ子が居たり、離婚が多いのにはとても驚きました。

自分を表現することも大切ですが、相手がいなければ自分を表現することさえできなくなってしまいます。

これは僕の仕事にも言えます。例えば自分が何十年も医学を勉強していて、沢山の医学の知識があって、それを誇っていたとしましょう。

しかし、長年かけて体得してきた知識は患者さんがいなければなんの意味もありません。ですから、来られる患者さんにはいつも感謝の想いを持つことを心がけています。

他者がいるおかげで自分も存在するという東洋の考え方は仕事、結婚、また人生のあらゆる面において大切だと実感しています。

 

留学を考えている人への言葉

これから留学したいと考えている人へメッセージをください。

留学は自分を変える大きなきっかけを与えてくれるものになると思います!

なぜならば「自分という存在は関係性によって決まる」からです。

例えば、自己紹介をするときに「私は日本人で、ハイキングが趣味で、アメリカで東洋医師をしていて、ウクライナ人の奥さんがいます」などと言いますが、これらのことは直接的に自分のことじゃないですよね。

自分と関係することを列挙していく中で、自分はどういう人なのかということを説明しているわけです。

つまり、今までと全く異なる環境に身を置き、今まで出会ったことのない人々と接していくなかで新しい自分が作られていきます

自分自身、アメリカという全く異なる文化に触れるなかで新しい自分に出会うことができました。

年の差を越えて兄弟姉妹のように親しい友人関係を築けたり、教授に物怖じせずに自分の意見を言ったり、人前で奥さんに愛情表現をたくさんできるにようになったり。

留学する前の自分と比べたら、こんな自分の一面ってあったんだぁと驚かせられます。

また、英語でコミュニケーションができるようになってからは、自分の仕事の範囲が大きく広がりました。

今働いているクリニックの仕事以外に、アメリカ国外で様々なプロジェクトに携わっています。

例えば、日本の医療専門者と共に血糖値を抑える自然の食材を用いたサプリメントの開発・販売に携わっているのですが、このプロジェクトにはアメリカで得られる情報がとても役に立っています。

その他、ヨーロッパで東洋医学をベースにしたオンライン診断サイトの構築をしたり、アフリカやロシアの人々に健康のコンサルなどをしたりしています。

日本語だけを知っていたら、このように世界中をまたにかけて仕事をする機会は作れなかったんじゃないかと思います。

留学は決して楽なものではなく、様々な試練に打ち勝つタフな心が必要だと言えます。

しかし、これを乗り越えた先に全く新しい自分に出会え、そして世界で活躍することを可能にする英語という強い武器を得られます!

皆さんの挑戦を応援しています!!!

 

インタビューを終えて

"東洋医学"はアメリカに住んでいても聞き慣れない言葉ですが、啓太さんが本当に分かりやすく説明してくれました。

東洋医学を知らない患者と常に接しているからこそ、相手目線で説明したり自分の考えをまとめることが上手なのかなと感じました。

自分が出来なかったことにチャレンジする姿勢や、日頃から誰かの役に立ちたいと考え行動する姿勢は留学希望者のみならず、私たち全員が見習うべきでしょう。

アメリカで東洋医師として活躍しながら、糖尿病の人の役に立ちたいと、日本ではサプリメントの開発にも携わる啓太さんを私はこれからも応援します。

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ムネ

ネバダ州立大学ラスベガス校卒。現地の会社からE2ビザを取得しラーメン屋店長になるも、2年後にコロナで解雇。ロスに引っ越すもそこで不法滞在となる。日本への一時帰国を経て現在はサンディエゴのレストランで働いています。 Facebookページから最新記事をお知らせ
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