新潟県立燕中等教育学校、Diablo Valley Collegeを経てUC Berkeley社会学部を卒業した幸田優衣(こうだ ゆい)さん。
世界大学ランキングNo.1のUCバークレー社会学部を卒業した彼女ですが、その成功の裏には並々ならぬ決意と努力がありました。
社会学部に興味のある方、UCバークレーを目指している方に向けて、彼女だけの留学ストーリーをお聞きました。
もくじ
考えてもいなかった“アメリカ”という選択肢
留学をする前、ゆいさんは日本でどんな学生だったか教えてくれますか?
UCバークレーに行ったと言うと非常に優秀だったんじゃないかなと思われるかも知れませんが、全然勉強を頑張っていなかった生徒でした。
むしろテストではクラスでビリを取ったこともありますし、いわゆる“問題児”みたいな所があったかもしれません。
今振り返ると勉強する目的、意味が分からなかったというところが一番大きな理由だったと思っています。
私の学校はいわゆる進学校で「受験勉強しなきゃいけない、勉強頑張らなきゃいけない、大学には良いところに行かなきゃいけない」というのが当たり前の価値観の中でずっと過ごしてきたので、勉強に対するモチベーションが上がらなかったのかも知れません。
そんな中、アメリカに留学したいと思ったキッカケは何でしたか?
英語には漠然と憧れがあって、海外留学はいつかしてみたいと思っていました。
そうした時に知り合いが、立命館大学でアメリカの学生を招いて座談会をするから来なよと誘ってくれて、地元の新潟から滋賀県まで夜行バスで行くことにしたんです。
ずっと田舎に住んでいたので、「アメリカ人の方と英語で話せる!」と思って行ったら、アメリカ人の学生ではなく、日本の高校からアメリカの大学に進学した日本人の方のお話だったんですね。
その時に初めて「日本人でもアメリカの大学に行けるんだ!」と思ったのがターニングポイントだったかなと思います。
そこから自分もアメリカの大学に行きたいと思い始めました。
大学では社会学を専攻されたそうですが、社会学に興味を持ったキッカケは何でしたか?
自分の育った環境が周りと違うと言うこともあって、常に私は周りと比較する性格だったのがキッカケかも知れません。
中高一貫校に集まる子って中学受験を突破できるような教育費をかけられるご家庭の子供達が集まるんですね。
やはり親御さん自身も良い教育を受けていて、裕福な家庭ばかり。
それに対して私の両親は2人とも大学に行っておらず、家庭は裕福とは程遠いものでした。こんな環境の中で日々を過ごし、習い事や遊ぶ際の予算など普段の生活の中で周りとの違いを感じていました。
「私と他の子はなんで育った環境が違うのだろう?」ということを常に考えていて、大学に行ったらその事についてもっと深く勉強したいと思っていたんです。
それをYahoo!知恵袋で相談したところ、「社会学」が私の勉強したい内容にぴったりだと知り、調べてみると社会学部で世界一有名だったのが“UCバークレー” でした。
そこで私は「UCバークレーで社会学を学びたい」という思いから、結果的にアメリカに留学する決断に至りました。
なるほど、そう言った経緯でUCバークレー で社会学を学ぼうと思ったんですね。ご両親からは賛成を得られましたか?
いえ、私の親には当初反対されました。
でも「アメリカだから」とか、「危なそうだから」とか一方的な反対ではなく、「高い学費をどうやって払うのか」「借金をしてどうやって返済するのか」「留学後に就職はどうなるのか」といった具体的なことを私が考えていなかったのが原因です。
ただ「アメリカに行くな」ではなくて、そういったことまで深く考えてないからご両親は反対だったんですね。
確かに親だって金銭面、安全面、進路面も不透明のまま子供を一人、アメリカには行かせられないじゃないですか。時間が経つにつれ、反対というよりむしろ私のことを大事に思って不安点をあげてくれているということに気づけるようになりました。
親の不安を全部解決できるよう、ネットを使ったり留学エージェントの方にも協力して頂き、不安要素はとことん調べたんです。
全部調べた上で親に再度説明し、そこまで自分でリスクや対策を考えられていて、それでも留学したいのであれば行っておいでと応援してくれました。
なかなかそこまで深く高校生が考え調査するのは大変だったと思います。確かUCバークレー は学費が高いことでも有名です。どうやってお金を工面しましたか?
私は学費を全て貸与型(たいよがた)の奨学金と両親からの借金という形で工面しました。
アメリカにいる間簡単に仕事を出来るわけではないので、両親も労働時間を長くしたり、働き先を増やしたりと、私が卒業できるよう費用面ではたくさんサポートしてもらいました。
学生ローンはどのように返済していくシステムなのでしょうか?
学生ローンは、基本的に返す金額や頻度はものによって選べることが多いです。
私が抱えている学生ローンの1つ目は数万円の額を毎月払っていく形と、2つ目は年に1回まとまった額を支払う形です。
そこまで私を惹きつけた、社会学とは?
社会学って聞きなれない学問であると思うんですけど、どういう勉強をするんですか?
例えば私たちが住む社会っていうのは、教育だったり、経済だったり、地域だったりと色んな側面があり、また違った人種、宗教、文化があって形成されていると思うんですね。
社会学っていうのはいわば社会的要因がどういう風な人を形成して、そういう人は社会にどういう風な影響をもたらしているのか勉強します。
私はもともと社会学の中でも、地域格差、教育格差、経済格差がどういう風に個人のアイデンティティの形成だったり、将来のキャリアプランだったり、人生像っていうものに影響をもたらしているのかっていうところに興味がありました。
ですが教育だけに興味があるなら教育学に行っていたかもしれないし、経済だったら経済学もいけたかもしれません。
社会学ってすごく包括的(ほうかつてき)に社会のいろんな側面や異なる側面の関係性、社会全体を学べるのが良いところかなと思っています。
面白いですね。教育だけではなく経済だったり、いろんな側面からみて人はどういう風に社会から影響を受けて成長していくのかということですよね。
ゆいさんは短大からUCバークレーに編入されたんですよね。短大から編入受験し合格するために、ゆいさんが特に行なったこと等あれば教えてください。
基本的には、自分の目指す将来像や大学を志望する経緯といった自分自身についてと、学校の成績、そして課外活動の3つの点が評価されていたと思います。
成績のところに関してUCバークレーであれば、フルスコアのGPA4.0があっても落とされてしまうケースがあると言われていますし、成績の面はすごくシビアです。
また課外活動や自分自身がどういう人間かということも評価の対象になっていたので、私はそういった点にもすごく力を入れていました。
最終的に受験の際にはGPA4.0の他に、課外活動でリーダーシップの役割を3つ、4つくらいやって、エッセイ(日本でいう小論文)を提出しました。
課外活動に参加しているだけよりも、リーダーシップの役割につく方が評価されると感じますか?
実際のところはそうだと思います。
私は団体に入らずボランティア活動も行っていましたが、それを証明するものって無いんですよね。
小さな組織であっても“ボランティアをした証明証“みたいなのを出してもらえて、この人はどういった活動をしましたっていう証拠になるんですが、個人で活動した場合ってあんまり信用性がないところがネックになったりします。
もちろん課外活動をすることは大切なのですが、出来るだけネームバリューが通ったところで活動する。
またそこで「何をするか、何を学んだか」ということが編入時に問われます。
今聞いてて思ったのが、課外活動を3つ4つやりながらGPA4.0をキープするって、ゆいさん絶対寝てないですよね。
寝てましたよ。でも睡眠時間は短かったかもしれないです。
UCバークレーというのはそれくらいやってようやく入れる学校なんですね。
はい、そうだと思います。
“UC Berkeley” で学ぶ世界No.1の授業とは?
実際にバークレーに入っての予習復習の量だったり、1日のスケジュールってどんな感じでしたか?
日によると言うか授業のスケジュールにもよりますけど、8時スタートのクラスとかもあったのでそういうときは7時30分とか7時45分とかに学校に行きます。
隙間時間に予習復習をして、ディスカッションとかもあるので基本的に日中は授業とか自主学習とか課外活動に時間をとられていました。
夜は課外活動で時間がとられてしまう日が週2回くらいあったので、課外活動がある日は家に帰るのは夜11時くらいだったりとかしました。
家はシャワーを浴びて寝るだけの場所だったりっていう感じの1日を過ごす日もあったんですけど、カフェでお友達としゃべりながら勉強したりと、もうちょっと肩の力をぬいて過ごしている日もありました。
でも勉強しない日はなかったかも知れませんね。
バークレーに実際に入って学校の特徴だったり、印象的だったバークレーならではの授業などありましたか?
教授勢は有名な方が揃っているというのが有名大学のいいところだったりするので、有名な本を書いている教授のもとで授業を受けたっていうのはバークレーらしいと思っています。
またディスカッションベースの授業が多いのですが、改めてバークレーの編入生はいろんなバックグラウンドからきていると感じさせられました。
例えばクラスメイトには元受刑者の子がいて、「自分の幼少期に周りの大人の影響を強く受けて罪を犯してしまった、刑務所に入ることは全然特別なことでなかったんだ」と、その子の視点から話を聞けたり。
バークレーの社会学部で勉強することによって、自分の知り合いしかいないコミュニティで過ごしていたらきっと聞けなかったユニークな経験や社会の一面、そこから出される議論や分析がすごく価値のあるものでした。
社会学という学問においては、教科書からの学びよりもクラスのディスカッションで得られる学びの方が大きいと個人的には思っているので、刺激的なクラスディスカッションがバークレーの授業のなかで特に思い出に残っています。
社会学、そしてアメリカ留学が私に教えてくれたこと
現在はコンサルティング会社に勤めていると聞きました。社会学が今の仕事にどどう生きているか教えてくれますか。
概念的なことを話すと、社会学をやっていると社会の仕組みとか人の考え方とか行動パターンとかすごくわかるというところですかね。
コンサルの仕事って何ということから始まるのかなって思うんですけど、お客さんである企業様にどうやったらより良いビジネスができるかをアドバイスをさせて頂いております。
例えば、ある企業は消費者に的確にアプローチし利益を向上させたいとします。
ここで社会学を学んだことが生かされてきて、ターゲット層が育ってきた環境または現在置かれている社会的地位から、その人たちがどういう購買行動を起こすかなど社会学を通じて学んだことが仕事に役立っています。
また会社というのも社会的な組織なので、クライアントの方にアドバイスをする際にはその人の会社の規模、または会社の立ち位置に合わせてアプローチの方法を変えるようにしています。
社会学を通して学んだそういった面での観察眼っていうのはすごく今の仕事にいかされているなと思っています。
それってすごい面白いですね。社会学って心理学以上に色んな要素を含めた上で人を観察するから、心理学より正確に人の行動パターンが読めそうです。
実際にゆいさんがそこから予想する行動パターンってどれくらい合ってるんですか?
それは正直まだ半分半分だなと感じています。
確かに私の予想が合っているケースや、周りの人がなかなか気づかない視点で考えられるので、気づかせてくれたことに感謝されるクライアント様もいます。
でも、単純に考えすぎっていうケースもあったりします。笑
なるほど。笑
私自身元々考えすぎる癖があったのに、社会学を学んだことでもっと深く考え込むようになったのかも知れません。
必ずしも購買行動がその人の社会的環境に応じて変化するわけではありませんし、難しく考えすぎるのも良くないですね。
必ずしも私の予想が正しいということはなくて、社会学で学んだことはプラスとマイナスの側面があって、一長一短です。
最後に、日本を飛び出しアメリカに留学して良かったと思う点はありますか。
やはり社会学での経験になってしまうかなと思います。
私自身もあんまりバークレーみたいなエリート大学に見合うようなバックグラウンドから来てないですし、社会学に興味を持つ子って自分の育った社会的地位をきっかけに社会に疑問を持っている人が多いんですね。
「なんで人は生まれながらに平等じゃないのか」というような社会に対しての課題意識を持ってみたいな子がバークレーの社会学に集まっていたので、そういう子たちとの出会いって言うのは自分の成長にも繋がりました。
あとは「アメリカ留学」という自分で決めたことを最後までやりきったことは、今の自信になっていますね。
留学を決めた時から親を説得するために事細かく調べるところからスタートし、アメリカに来て一から友達づくりなどネットワークを広げていったのは達成感があります。
アメリカという異国の地に来たおかげで自分の育った環境から抜け出し、自立心というか一人で生き抜く力を身につけられたと思っています。
留学を考えているあなたへ
自分の夢を話した際、周りから「出来っこないよ」なんて応援とは真逆の言葉を言われたことがある人はいませんか?
「お前がアメリカの大学になんて行けるわけがない。」
これは、高校3年生のとき担任の先生に進路相談をした際に言われた言葉です。
それでも私は海外進学に挑戦し、先生を見返すかのように大学の授業ではオールAを取り、憧れていたUC Berkeleyを卒業しました。
あの時、先生の言葉に振り回されず自分を信じて挑戦してよかったと感じています。
夢を語る際、応援してくれない人は残念ながらどこにでもいます。
でも結局自分の人生に責任を持てるのは自分だけです。失敗しても後悔しても、あなた以外責任を負ってくれる人はいません。
もちろん周りの意見に耳を傾けることは大切です。でも自分の人生に責任を持ってくれない他人の声に振り回される必要はありません。
今留学を考えている人には、周囲の意見を参考にしながらも自分の気持ちを一番大切に人生をデザインしていってほしいです。応援しています。
インタビューを終えて
UCバークレーはアメリカ人で知らない人はいないと言っても過言ではないほど、超名門校。
ゆいさんがそこにたどり着くまでには、私たちが想像を絶するほどの努力と覚悟があったはずです。
インタビューをしていて非常に印象的だったのはゆいさんが「留学中に挫折したことはない」とおっしゃっていたこと。
これは決して留学は簡単だったと言っているのでなく、辛いことや大変なことが当たり前だと覚悟して留学したからこそ出てきた言葉ではないでしょうか。
現在はビジネスコンサルタントとして働く傍ら、NPO団体”留学フェローシップ”の理事としても活躍するゆいさんを応援しています。