東京都松が谷高等学校、NIC International College in Japanを経てカリフォルニア州の大学に留学した宮下奈和子(みやした なおこ)さん。
中国で生まれ、中学校に入学すると同時に日本へ引っ越してきた彼女は、幼い頃から英語の発音に魅了されていたと言います。
中国語、日本語、英語を話すトリリンガルの彼女でさえ、留学当初は日本とアメリカの文化の違いに悩んだそうです。
現在は日本の会計事務所で働く奈和子さんに、アメリカの大学生活から恋愛事情に至るまで、彼女ならではの留学体験をお聞きしました。
もくじ
英語にときめいた学生時代
留学をする前、日本で奈和子さんがどんな学生だったか教えてくれますか?
実は私は中国で生まれて、中学生のときに日本に引っ越したんです。
小学校の時から学校の勉強が好きで、特に英語の発音に魅力を感じて興味を持ち始めていました。
中学校と高校は日本で過ごし、高校は英語をメインに勉強したかったので外国語科の高校に進学しました。
でも知っていることばかりの勉強に物足りなさを感じ、軽音楽部に入って部活動に専念していましたね。
当時はV系音楽のギターを担当し、後夜祭でバンド演奏もしたことがあるんですよ。
奈和子さんは中国出身なんですね。
私のお母さんがずっと日本に住んでいて、小学校までは祖父母に中国で育てられたんです。
中学校に進学するタイミングがお母さんにとってなぜか丁度よかったみたいで、弟と一緒に日本に引っ越しました。
中学校から日本語を勉強し始めたので、実は英語よりも日本語の方が苦手なんです。
留学を志したのはいつでしたか?
高校で英語を勉強しましたが、日本で英語力を伸ばすのに限界を感じていました。
外国語科で英語をメインに勉強するも、自分の思っていた授業ではなかったんですね。
当時は留学したいとは思っていなかったものの、海外に行かないと英語力は伸びないと気づき始めたんです。
「英語をもっと勉強したい」と悩んでいた高校3年生の時に、お母さんが英語学校のパンフレットを持ってきたのがキッカケで、直感的に留学を決めました。
留学することへの怖さはありましたか?
海外で生活することの怖さはありませんでしたが、留学には大金が掛かるので経済的に大丈夫かなという怖さはありました。
結局学生ローンを組んで留学し、それでも足りない分はお母さんがサポートしてくれました。
留学先ではビジネスを最初に専攻したそうですね。昔からビジネスを勉強したいと思っていましたか?
昔からビジネスに興味があったわけではなく、むしろビジネスに対して悪いイメージの方が強かったんです。
中国で生まれ育ったせいか、商売人ってずる賢くて人からお金を騙し取っているイメージがありました。
ですが日本の英語学校でお会いした先輩のお陰で、私のビジネスに対する価値観が変わりました。
その先輩はアフリカのバラを日本で販売していて、ビジネスはただのお金儲けではなく、社会貢献の要素もあると教えてもらったんです。
バラを日本で販売することでアフリカで雇用を生み出し、日本人にもっとアフリカのバラの良さを知ってもらえる。
その先輩のお陰で私の中でビジネスのイメージが変わり、留学先ではビジネスを勉強したいと思いました。
夢だった海外での生活、そして痛感した文化の違い
奈和子さんはアメリカに留学し、最初は短大に通ったと聞きました。
はい、私はサンフランシスコにあるDiablo Valley College(DVC)に進学しました。
カリフォルニアにある他の短大に比べると学費は安い方でしたし、世界的に有名なUCバークレーも近かったので編入も有利かなと思いました。
でも当時は自分がなにをしたいか、どんな勉強を専攻したいかもよく決まっていなかったため、友達と一緒にDVCを選んだのかもしれません。
アメリカに留学し、日本の授業との違いを感じましたか?
やはり授業がディスカッション中心で進むところですかね。
なぜディスカッションが大事かというと、自分の意見を口に出すことによって、自分の考えを確認できるんですよ。
そして自分の考えを言葉にしてみて、「私ってこんな風に考えているんだ」と驚くこともあります。
また自分の言ったことを相手が理解してくれることによって、自分の自信にも繋がります。
日本の授業は先生が一方的に話して進みますけど、確かにアメリカの授業って生徒が中心で進みますよね。
その教育制度が原因なのかは分かりませんが、今の日本の仕事場ではディスカッションをする文化がまだ普及してません。
ディスカッションというのはある意味、知識をシェアすることとも捉えるでしょう。
しかし、知識を一人占めにする、部下に伝授したくない上司は少なくないと感じました。
日本人全員がそうだとは言いませんが、日本の教育がディスカッション出来ない職場を生み出してしまっている原因の一つかなと思います。
アメリカとの文化の違いは何かありましたか?
これは失敗談なのであまり大きな声では言いたくはないんですが、デートに対しての価値観の違いには驚きましたね。
大学3年生の時に、同じサークルのアメリカ人の先輩と仲良くなり、第一印象もすごい良くて二人とも意気投合したんです。
ある日メールで「デートしよう」と連絡が来たので、私たちは既に付き合っているんだと思っていたんですね。
アメリカ人は告白しないでお付き合いが始まると聞いていまいしたし、日本で「デート」ってカップルがすることですよね。
そしたらある時その人が他の女の子と一緒にいたので問い詰めたところ、驚きのことを知らされたんです。
どうやらアメリカではまだ付き合っていない二人が遊びに行くことも「デート」と呼ばれ、デートを含めた”お試し期間”を経て、正式にお付き合いを始めるそうです。
それまでアメリカ人と付き合ったことはなかったですし、無知だった私も悪かったと思います。
なのでこれから留学する女性の皆さんは、アメリカ人の男性に注意して下さいね!笑
恋愛に対する考え方は日本とアメリカで全然違いますから、それは大変な経験をしましたね。笑
小学校から英語を勉強してたので言語の面は苦労しませんでしたか?
教科書で習う単語は理解できたものの、アメリカ人が話すスラングが全くわかりませんでした。
スラングって学校では習わないし、教科書にも出てきませんよね。
特に若い子はスラングを多用するので、話が全然通じないことに最初は苦労しました。
スラングはどうやって勉強しましたか?
アメリカ人と話している時にスラングを聞いて、それを後で調べて覚えました。
「わからないスラングがあったら調べる」の繰り返しでスラングの語彙を増やしていきましたね。
あとは話し相手がいないと会話も出来ないので、友達づくりも頑張りました。
でもクラスでアメリカ人の友達はなかなか簡単には作れなかったんですよ。
特に短大には学校に通いながら働いている生徒も沢山いて、「授業終わりに一緒に勉強しよう」とはなるんだけど、「週末に遊ぼうね」とはなかなかなりませんでした。
みんな仕事で忙しかったので、なかなかクラスメイト以上の関係にはなれなかったんです。
日本の大学って20代の生徒ばかりですが、アメリカでは10代から定年退職した人まで幅広い年齢層の学生がいるんです。
コミュニティ活動を通して学んだ実行に移すことの大切さ
奈和子さんはアメリカで友達を作るために何か特別なことをしましたか?
特別なことではないですが、新しいを友だちを作るためにコミュニティ(日本の大学のサークルに近い)に入ろうと思ったんです。
コミュニティと言っても友達を作りただ遊ぶわけではなく、特定の目的を持った生徒が集まる校外活動です。
そして見つけたのがUNICEFのコミュニティで、そこではファンドレイザープランナー(Fund Raiser Planner)として活動しました。
ファンドレイザープランナーとはどんな役割ですか?
UNICEFは非営利団体ですが経費は掛かるので、イベントを通して募金をお願いしたり、物を売ったりしてお金を集める役割です。
私ともう一人のインドネシア出身の女の子がリーダーとなり、いちごバナナスムージーのレシピ作成、そして宣伝から販売まで全てを行いました。
学校内での販売や、デリバリー販売なんかもして結局$500くらい集まったんですよ。
サンフランシスコはホームレスが多いので、集めたお金は30人くらいのホームレスの人たちへ、生活必需品を買うのに使いました。
何かUNICEFの活動を通しての気づきや学びはありましたか?
実行力の大切さですね。
例えばいちごバナナスムージーを作ろうねって話しても、実際に行動に移さないと何も意味がないじゃないですか。
何かをしたいと思っていても、考えることで終わってしまう人が世の中ほとんどで、考えている間に行動している人はどんどん先にいってしまいます。
そしてもし留学を考えているなら、勉強以外にもコミュニティに入り、リーダーのポジションにつくことを勧めます。
大学は学校の成績と同じくらい校外での活動を評価するので編入するときにもプラスになりますし、なにより人として成長できるからです。
私は短大でコミュニティ活動の楽しさに気づき、四大に進んでからは二年間で合計6個のコミュニティに入りました。笑
さすがに6個まで入らなくてもいいかもしれませんが、勉強だけではなくコミュニティでの活動も大切にしてほしいですね。
大学での経験は全てが繋がっている
DVCを卒業した後はロサンゼルスの四大に編入し、会計を専攻したと聞きました。
実はこれもICFというキリスト教のコミュニティに参加したのがきっかけでした。
ICFはキリスト教徒じゃなくても参加できるコミュニティで、毎週金曜日にアメリカ人の生徒や留学生が集まり、無料でご飯が食べれたり、ゲームを通じて交流したりします。
そこで働くスタッフの一人と仲良くなるにつれて、その人の娘がロサンゼルスにあるフラトン(カリフォルニア州立大学フラトン校)という大学で会計を専攻していて、同じ学校を勧めてくれたんです。
将来は自分のビジネスをしたいと思っていたので、会計業務などの数字を勉強することは大切だと前々から考えていました。
自分でもフラトンについて調べ、他の四大に比べて学費が安かったのと、ビジネス系の学部が強かったことから、編入先はフラトンに決めました。
日本人でもフラトンを知っている人は少ないですが、実はフラトンはアメリカ全土の大学の中でもビジネス学部が有名で、卒業生にはバンクオブアメリカ(Bank of America)のCEOもいます。
実際にフラトンに編入し、自分が思っていたような会計の勉強が出来ましたか?
はい、やはりビジネスに強い大学だけあり授業のレベルは高かったです。
実はフラトンではTax(税金)のコミュニティに入り、一般市民の確定申告のお手伝いしていました。
編入してすぐに同じ学部の先輩から「絶対入った方がいいよ」と誘われたのがきっかけです。
一般市民の確定申告を扱うコミュニティが大学に備わっているのはアメリカ全土でも珍しく、フラトンは数あるの中の一つなんです。
他人の確定申告を扱うわけなので、そのコミュニティに入るためには税法のテストに受からないといけず、一般市民のクライアントもいたのでサークル活動をするというよりは、仕事をしているっていう感覚に近かったです。
Taxのコミュニティに入り、日本とアメリカの税制度の違いなどありましたか?
アメリカでは学生に対する税額控除がある点ですかね。
税額控除っていうのは、学生は税金の負担額が減るということです。
アメリカでは学生ローンの支払いに対して税額控除あるんですが、その制度は実は日本にはありません。
また条件を満たすとアメリカ市民だけでなく、留学生に対しても税額控除が充実していて、そういう面から見るとアメリカは国単位で学生の負担を減らそうとしているのかなと思いました。
学生に対しての勉強を推進したいからこういう税制度があるのであり、アメリカは税金の面でも人々の大学教育を後押ししているのかもしれません。
学校に通いながらコミュニティで働き、そんな実践経験を詰めるのはとてもいい経験ですね。
机の上で勉強したことをすぐに実践に移すことで、深く理解し本当の知恵となります。
大学に行くだけではなく、自分に関係のある校外活動を行い、アウトプットすることが本物の学びになるのだと思います。
このコミュニティでの活動があったからこそ実務経験が身につき、卒業後の仕事先も見つけやすかったです。
やはり会計となると専門業務ですし、何もわかない人と既に実務を2~3年経験している人では、会社はどちらを採用したいか明白ですよね。
大学卒業後にロサンゼルスの会計事務所で勤めた後、現在はその会社の日本支店に勤めています。
私が今この会社で働けているのは会計のコミュニティに入ったおかげだと思いますし、ICFの活動に参加していなかったらフラトンを知ることもありませんでした。
そう言った意味では全ての経験は本当に繋がっているなと実感しますし、勇気を振り絞って行動することの大切さを身に染みて感じます。
留学を考えているあなたへ
これから留学を考えている人へメッセージをいただけますか?
留学で得ることは多々あるけど、大変なこともいっぱいあります。
そんな留学をしたことによって、自分に自信を持つようになりますね。
実際挫折に直面した時に、お母さんがこう言ってくれたのです。
「あなたは長期留学4年というすごい大変なことを乗り越えたんだから、こんなことに落ち込むなよ、きっと大丈夫だよ」と。
この言葉は立ち直る力をくれました。
そして、まだ留学先を決めてない人たちへ、General education(一般教養)に対しての見方をここで伝えたいです。
General educationは留学先を選ぶ際に重要な決め手になると思うからです。
ちなみに、私はGeneral educationが必須科目であるアメリカ教育システムを選んでよかったと思います。
自分の専攻が決まっていたけど、General educationを通じて普段触れることのない分野も知ることができ、そこから新しいアイデアに繋げて、今の自分に至ったので、自分にとってはとても有意義でした。
これから留学する人たちは後悔のないように思い切り人生を楽しんできてください。
インタビューを終えて
今回は英語学校時代の同級生でもある、奈和子さんにインタビューをしました。
当時から活発的だった彼女は、やはりアメリカでも積極的に様々なコミュニティ活動に参加したようです。
私もいろんな留学生を見てきましたが、奈和子さんのようにここまで校外活動に参加した留学生を見たことがありません。
ただ考えて終わりではなく、常にアクション(行動)を起こしてきた彼女だからこそ、それが結果的に認められ、卒業してからの進路がすぐに決まったのではないでしょうか。
これから留学を考えている人へ、「考えているだけではダメ、実行しよう」と実体験を通して熱く語る奈和子さんは、同じアメリカ留学を経験した者として本当に魅力的でした。
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