こんにちは、ムネです。
私が住んでいるアメリカ・ロサンゼルスは、ジョージ・フロイドさんが死亡した事件をめぐる抗議デモが毎日のように続いています。
事の発端は5月25日にミネソタ州で偽札を使った疑いで逮捕された黒人男性ジョージ・フロイドさんが、白人警官に取り押さられ、首の圧迫による心肺停止で死亡した事件。
死亡させた警官の最初の処分が解雇のみだったことを見ても理解できる“警察による必要以上の暴力が許される社会”、そして黒人が白人と比べ逮捕される確率、命を落とす確率が高いことから“人種差別”に対する国民の怒りが爆発し、全米140都市で抗議デモが起きています。
正直、今回の記事を書くのはためらいました。
私は黒人でもなければ、人種差別の専門家でもありません。
今回の事件のような警察による権力の横暴、アメリカに根付く人種差別問題について、素人の私が意見を述べるべきなのか。
悩んだ挙句、この問題に対する記事を書くよう駆り立てたのは、ブログを始めるキッカケとなった「自分の考えを自分の言葉で発信したいという熱い思い」でした。
そこで今回は4日にわたり、以下の事項について発信します。
- Part1: ロサンゼルスの現状とビジネスへの影響
- Part2: なぜ警察は人を殺しても無罪になるのか
- Part3: 腐敗する警察システムと変革の波
- Part4: 黒人差別をなくす為に私たちが出来ることは何か
それでは初日の今回は、私が住む街「ロサンゼルスの現状とビジネスへの影響」について発信します。
もくじ
ロスの現状
この記事を書いている6月7日現在、夜中でもパトカーやヘリコプターの音が鳴り響き、ロサンゼルスでは緊迫した状態が続いています。
先週の金曜日から本格化して起こった抗議デモは、週末に激しさを増し、Los Angeles Timesによると3日間で逮捕されたのはロサンゼルスだけで3,000人を超えました。
街の各地で抗議デモが起こり、市からは外出禁止が発令され、デモを沈静化するため武器を持った州兵が街のあちらこちらに配備されています。
外出禁止令とは、あなたが小さい頃「〜時までに帰ってきなさいと」という門限があったように、指定された時間の外出を禁じるものです。
こちらが私の携帯に実際に送られてきた外出禁止令です。
外出禁止令まで出たよ。
今回のプロテストはコロナより危険だな。 pic.twitter.com/qNa1Gf5IBv
— ムネCAレストラン店長 (@Mune_tokyo7) May 31, 2020
「本日の夜8時から明日の朝5時半まで外出を禁止する」と書かれていて、8時以降に外出すると逮捕されてしまいます。
この外出禁止令は先週の土曜日に発令され、街によっては現在も毎日のように発令されています(ロサンゼルスは6月4日に解かれました)。
最初の抗議デモから1週間以上経った現在でも、街のいたるところでデモ隊を見かけます。
こちらは実際に私が撮影した動画です。
私が遭遇したのはざっと1,000人を超える抗議デモ隊。
ニュースで見る様な略奪、暴徒化はしていませんでしたが、あらゆる小売店が落書きの被害に遭っていました。
デモ隊がビバリーヒルズにも来ました。
あんなに綺麗なロデオドライブがこの有様。 pic.twitter.com/awcxSm3D0a
— ムネ🇺🇸CAレストラン店長 (@Mune_tokyo7) May 30, 2020
どんな人が抗議デモに参加しているかというと、
- 警察の暴走、人種差別に怒りが爆発している人
- ジョージ・フロイドさんの死を悲しむ人
- このような問題を本当に解決したい人
- コロナの影響でストレスが溜まっている人
- 決定的現場を動画に収めようとする人
- デモに便乗して略奪行為を企む人など
抗議デモをしている半分は本当に今回の事件・人種差別問題に関係する人たちですが、その他の人は別の目的で抗議デモに参加している様にも見えます。
ほとんどのデモ隊は破壊行為をせず、平和的に抗議しているのも事実ですし、ニュースで見る様な略奪行為を行なっている連中がいるのも確かです。
今回の事件がここまで大きな抗議デモに繋がったのは、コロナウィルスによる国民のストレスが溜まっていたことが大きな要因でしょう。
2020年4月時点での失業率は14.7%で、これは1933年の世界恐慌中に記録した24.9%に続くアメリカの歴史で2番目に大きな数字です。
実際にラスベガスのレストランで店長だった私も解雇になりましたし、コロナの影響で職を失う人は後を絶ちませんでした。
経済活動はストップし、国民はロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされ、家にほぼ監禁される状態が続いたのです。
4月下旬には国民も我慢の限界で、ロックダウン中に関わらずビーチには大勢の人が詰め掛けました。
これは4月26日にロサンゼルス・ニューポートビーチで撮られた写真です。
今回の抗議デモが過去のデモより大規模で長引いているのには、コロナの影響があるのではないでしょうか。
また、SNSの普及により情報伝達力が増し、決定的瞬間を捕らえる動画を誰でも見れるようになりました。
昔はマスコミが流す映像でしか事件を知ることが出来なかったのが、携帯を持っていれば誰でも情報受信者・発信者になれる時代になったのです。
事件の真相が明らかになりやくなった反面、決定的瞬間を捉え、多くのアクセスやいいねをもらおうとデモに参加する人が増えているのも確かです。
人の価値がSNSのフォロワー数といった数字で測られるようになってきた時代だからこそ起きている弊害でしょう。
ビジネスへの影響
さて、今回のデモ活動はビジネスにどのような形で影響を及ぼしているのでしょうか。
まずは外出禁止令が出されたことで、全てのビジネスは夜の営業停止、また街によっては1日営業停止を余儀なくさせられました。
ロサンゼルスの外出禁止令は夜の5~6時からというのが多かったですが、私が勤めるレストランが位置するビバリーヒルズでは午後1時からの外出禁止令が発令された為、丸一日お店を閉めました。
この外出禁止令はビジネスにも当てはまる為、規定時間外で営業をしていると捕まってしまいます。
またデモ隊というのは基本的に歩いて抗議しているだけなので、ビジネスに直接害を与えるわけではありませんが、心理的影響は大きいです。
こちらはデモ隊が私たちの店の目の前の通った映像です。
街から忠告があったのでお店は早めに閉店。
するとデモ隊がお店の目の前を通過。
この状態でお客さんなんか危なくて入れられないし、従業員を働かせるわけにもいかない。
プロテストでお店クローズしたのは初めて。 pic.twitter.com/QHFz4WJU0M— ムネ🇺🇸CAレストラン店長 (@Mune_tokyo7) May 31, 2020
最初に感じた率直な感想は、なにかされるのではないかという“恐怖心”でした。
こんな恐怖に怯えながら働きたくありませんし、「お店で働く従業員にもし何かあったら」と思うと、営業を続けるわけにはいきません。
そして中には、略奪行為の被害にあったお店も続出しています。
こちらは私たちのレストランの真横に位置し、被害にあったメガネ屋さんです。
ガラスが割られ、中の商品がほとんど盗られている状態でした。
略奪の被害に遭っている多くがアパレルやコンピューターを販売する小売店。
あるアパレルショップでは飾ってあった単価500万円もするNikeの靴が2足も盗まれているなど、単価の高い商品が転売目的で次々と狙われています。
さらに問題は盗まれた商品が保険の範囲外だということ。
通常ビジネスが入っている保険というのは“強盗”などに適用されますが、今回の様な略奪行為は“テロ”と見なされるため、保険が下りない場合がほとんどなのです。
コロナで売り上げが下がっていたのにも関わらず、略奪までされては個人店の存続は難しいかもしれません。
私のレストランでは、万が一に備えコンピューターなど金目の物は全て撤去し、デモが終息するまで店を閉めています。
街を歩くと木の板で入り口を塞いでいるお店や、中の商品を全て撤去しているお店も見かけます。
コロナの自粛がようやく解けてきたというのに、客足が戻り、通常営業出来るのにはまだ時間が掛かりそうです。
終わりに
今回の記事ではロサンゼルスの現状、そしてビジネスへの影響について紹介しました。
ニュースで見る様なことが目の前で起き、困惑する毎日が続いています。
次回の記事では、アメリカで今明るみになってきている”腐敗する警察システム”についてお話しします。
そして警察の暴走に一番被害を受けているのが、紛れもない黒人たちなのです。
引用文献一覧